松田裕之教授(ユネスコチェアホルダー)令和7年2月19日
真鶴県立公園を中心にユネスコエコパーク(生物圏保存地域、英語略称BR)に登録する可能性を検討するため、元ユネスコMAB計画主査(元横浜国大教授)Miguel Clüsener-Godt博士夫妻と松田が2025年2月19日に真鶴町を訪問した。NPOディスカバーブルー 代表理事の水井涼太博士と神奈川県立生命の星・地球博物館大西亘主任学芸員に真鶴駅から引率いただいた。

真鶴魚座(市場)付近での昼食後、琴ケ浜からお林の森の説明を受けた。約3世紀前まで主に茅場だった場所にマツが御用林として植林され、約150年前にはクスノキが植林されたが、どちらも自然更新はなく、タブノキやスダジイなどの広葉樹が増えていることが説明された。1897年制定の森林法による魚付き林指定の早期(1904年)にこの森が指定された。ただし、崖の断崖ではマツが自然更新しているとのことだった。
次に「山の神社」に行き、古来から漁民が森を豊かにすれば漁場が豊かになると考えて森を維持し、後述の石材業者とともに神社を祭っていたことが説明されていた。


望む海には定置網が見える
続いて遠藤貝類博物館に移動し、水井博士から真鶴の自然および海の学校などの活動について説明を受けた。真鶴町観光課の朝倉嘉勇課長、高田大輔係長、喜多村幹太主事も同席し、水井博士、大西主任学芸員とともに県立公園遊歩道の視察にも最後まで同行いただいた。

水井博士の説明後、松田からユネスコエコパークの概略を説明し、世界自然遺産と異なり核心地域の自然保護だけでなく、移行地域における自然資源を活用した「持続可能な社会のモデル」となることが目指されていること、原生自然の保護だけでなく自然を再生する活動も評価されることを説明した。また真鶴県立公園が登録される際の条件について、県立公園の第1種特別地域は現行の国内委員会の「基本的考え方」では核心地域に該当しないが、理由がつけば可能性があること、海域を含めた登録をユネスコも歓迎することなどを説明し、現状のマツとクスノキの林を維持するよりも、自然の遷移に委ねている最近の真鶴町の取り組みを説明することが重要と説明した。
快晴に恵まれた遊歩道を散策した。2013年にマツの植樹千本記念の取り組みも見られたが、マツの樹種更新は容易でなく、またマツノザイセンチュウによる松枯れが進行し、以前は樹木に管を立てかけて樹上近くから薬剤を散布し、その後は薬剤注入で防いでいること、近年ではマツの枯死を許容して自然更新を見守る方針に変えていることが説明された(真鶴町お林保全協議会2018も参照)。マツは開放的な環境に自生する陽樹であり、断崖などには実際に自然更新しているが、魚付き林としては広葉樹の方がむしろ適しているだろう。また、かつての薬剤散布により、昆虫相などにも負の影響が残っていることが指摘された。日本では西日本にしか本来分布しないビロウが分布を広げていることへの対策の必要性が大西主任学芸員から指摘された。


ビロウと大西主任学芸員
真鶴町には箱根ジオパークの構成要素があり、いくつかジオパークの説明板がみられる。

また、真鶴は江戸城畜場にも利用された石材の石切り場である。番場浦海岸から望む石切り場の跡の上の丘には、まとまった照葉樹林が育っていることが認められた。

最後に、博物館に戻って議論した。Clusener-Godt教授からは、エコパーク登録の手続きについて説明があった。
参考資料
- 真鶴町お林保全協議会(2018)お林保全方針 ~お林の基本的な考え方~ https://www.town.manazuru.kanagawa.jp/material/files/group/18/ohayshi-houshin.pdf
- 松田裕之(2025/2/19)真鶴ユネスコエコパークの可能性
PDF https://ecorisk.web.fc2.com/2025/250219MNZ_vKuWZPe6Qr.pdf
当日録画(一部別に録画した内容あり)https://youtu.be/-ZoiUL6W9PM